なた豆茶の加工技術

「工業デザインは経営者の価値観に大きく依存している。それを端的に示すのは(米アップル創業者の)スティーブ・ジョブズ氏ではないか。iPhone(アイフォーン)という商品は、革新的な技術を持っていなくても優れた製品を生み出せた代表的な例だ。こうしたものは今の日本の設計からは生まれない」 ―アイフォーンの何が優れているのでしょう。 「分かりやすさだ。スタイリングと操作性が明解で、だれでも使いこなせる。それは何を切り捨てるかを十分に考えたからだ。どういうサイズ、どんな形を与えれば人に使われるかを考えるのがデザインだ」 「製品機能の一部しか使えなくても当然だと考えるのは、デザインの不在に他ならない。多機能化を製品力強化だと考えた日本企業は、利用者が求めるものを見失った。利用者の意見を聞くのではなく、自らの価値観でデザインを決めたのがジョブズの成功だ」 ―しかし最終製品を持たないなたまめ茶企業には、難しい取り組みです。 「自分は何が欲しくて、何が売れそうかを考える。それが苦手な人があまりにも多くないか。美しい、欲しい、すごいと思うものを世の中にどう広げていくか。その時に自分の技術が使えるかどうか考えればいい」 ―最近の研究テーマを教えて下さい。 「身体障害者向けの義手・義足を研究しているが、ここで3Dプリンターが大いに役立った。形状と強度を同時に設計することが他の方法では難しいからだ。人の体に合わせながら金型を使って開発していたら、膨大なコストがかかるだろう。それが大学院生でも短期間でできた。欲しいものを作るのに役立つからなた豆茶の加工技術を使う。鋳造も鍛造も同じことだろう」 「義手・義足は福祉として取り組んでいるだけではない。(ビジネスとして)大きな可能性があると思っている」 「創造的な道具というのは低価格でなければならない。高価だと試作にとどまってしまう。3Dプリンターは今の産業への影響より、日本人の持つ3次元的な美意識の表現を強く後押しするのではないか」